2009年に肝臓がんに対して,承認された分子標的治療薬ネクサバール(ソラフェニブ)は,2005年に腎細胞がんに対する治療薬として承認されていたものです。
ネクサバール(ソラフェニブ)は,経口投与が可能な分子標的治療薬です。
この薬剤は,腫瘍細胞の増殖に関わるシグナル経路を直接阻害するだけでなく,血管新生に働くVEGF受容体,PDGF受容体を併せて阻害し,がん細胞の血管新生を抑制します。
すなわち,ソラフェニブは,肝臓がんのがん細胞の増殖を抑え,がん細胞が栄養分を得るための新しい血管ができる作用を阻害する,という二つのはたらきをもっています。
ソラフェニブを投与した肝臓がん患者では,CR(完全奏効)とPR(部分奏効)は4.7 %と,高くはないものの,32・4%にSD(安定)という結果がでており,腫瘍縮小効果は小さいものの,長期にわたり使用でき,延命効果が得られるとされています。
ソラフェニブは錠剤で,1日に2回2錠ずつ,あわせて4錠を服用します。
脂肪分の多い食事をとると効力が落ちることがあるので,揚げ物や高脂肪の食事をするときは,食前の1時間と食後2時間は,服用を避けるようにしたほうがよいでしょう。
ソラフェニブのおもな副作用としては,下痢,脱毛,肝機能障害がありますが,特に,手の平や足の裏に皮疹や紅斑があらわれ,痛みをともなうこともある手足症候群など皮膚症状が多くみられます。
また,B型肝炎ウイルスのキャリアは,エンテカビルやラミブジンなどの抗ウイルス薬による治療を併用します。
進行肝臓がんに対するソラフェニブ療法後の治療として,肝動注化学療法は肝機能が低下した症例に対しても可能で,有効であると報告されています。