最近では,アルコールを摂取しなくとも,肝臓を傷めてしまう「NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)」という病気が数多く報告され,問題となっています。
この病気の原因はメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)による脂肪肝です。
NASHは,内臓肥満をベースとした脂肪肝が何十年とかけ徐々に進行し,肝硬変から最後には肝臓がんにも至る可能性もあります。 国内のNASHの罹患者は,成人の1%超,約150万人と推定されています。
特に脂肪肝のある人は注意が必要です。血液検査で,肝細胞が壊れて血液に流出する酵素「ALT」の値が高く,空腹時にもかかわらず,血糖値を下げるインスリン値が上昇している人がいます。
この段階はすでに脂肪肝であり,日本肝臓病学会のガイドラインでは,脂肪がたまった肝細胞が100個の細胞のうち10個あれば,脂肪肝と判定することになっています。
まだ,この段階では体重を3キロ以上落とせばよくなる可能性が高いのですが,さらに,肥満状態が続くと,肝臓に炎症が起きてきます。
そのような慢性肝炎の状態がNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)です。こうした慢性肝炎が何年も続くと,肝細胞が膨らんだり,線維化へと進むNASHに移行し,やがて肝硬変になり,肝臓がんになる場合もあるのです。
日本では,BMI25以上の肥満患者では,6〜7割がNAFLDの範囲に入る脂肪肝とされ,そのうちほぼ2割がNASHといわれています。
このNASHが怖いのは,専門医でもNASHと,予後良好な脂肪肝とを見間違えることがあるからで,きちんと両方を区分けして診断するのには肝生検が必要になってきます。
一般に予後不良な脂肪肝からは20〜30年たって肝硬変が出てきますが,NASHは10年ぐらいで2割が肝硬変になります。
最近では,肝硬変になる前から肝がんになるという症例が増えてきていると報告されています。 適度な運動と食事の管理,体重の管理をしっかりしていくことが予防には必要です。
NASHの治療法は現段階では,食事療法,運動療法,薬物療法などがありますが,最も有効な治療法は,減量することです。
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