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がんの予防には二段階あります。
一つめは,がんが発症する前に,がんとなる原因や体質を知り,食事や生活習慣を改善することなどによって,がんにならないようにすることで,これを「一次予防」といいます。
二つめは,健康診断やがん検診を定期的に受診し,たとえがんが発症したとしても早期に発見して治療する「早期発見・早期治療」であり,これを「二次予防」といいます。
●肝臓がんの一次予防
●肝炎ウィルスの感染に注意
肝臓がんは,その多くが慢性肝炎や,肝硬変から発症します。特にB型肝炎やC型肝炎は感染したウィルスにより,肝細胞の遺伝子に変異がおこり,がん化すると考えれています。
したがって,まずは肝炎ウィルスに感染しないように注意することが大切です。
B型・C型肝炎ウィルスは感染力が弱く,日常生活や性交渉で感染することはほとんどありません。
現在では血液のチェック体制が整備され,輸血で感染することはありませんが,1991年以前に輸血したことのある人は感染の可能性は否定できません。
また,ハリ治療や刺青などをおこなった場合,感染する場合もあります。
ウィルスに感染していても治療を受けることで発がんのリスクは下がりますので,不安を感じるなら,まずは血液検査を受けましょう。
●アルコールや薬物の過剰摂取に注意
アルコールの飲み過ぎは肝臓の細胞にダメージを与え,それが肝硬変につながり,肝臓がんの発生につながります。
アルコールの過剰摂取は自制し,肝臓をいたわりましょう。
また,毒物や薬物の副作用による肝硬変もあります。長い間,薬物を服用していたりした場合,肝細胞の壊死や,肝内アレルギーなどを引き起こし,それによって,慢性肝炎や肝硬変になる場合もあります。
●脂肪肝に注意
アルコールを摂取しなくとも,脂肪肝の状態が続くと,肝臓に炎症が起き,NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)という病気になり,それが肝硬変,そして肝臓がんになる場合があり注意が必要です。
このNASHの原因はメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)による脂肪肝であり,解決策は減量することです。
最近では,このNASHの増加が問題となっており,肝硬変になる前から肝臓がんになるという症例も増えてきていると報告されています。
運動と食事の管理,体重の管理をしっかりしていくことが予防には必要です。
●肝臓がんの二次予防
がん検診や健康診断によって早期発見・早期治療を目指すことが,がんの「二次予防」といえます。
アルコールを飲み過ぎている人や脂肪肝のある人,非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と診断された人はまず,検診を受けることが大切です。
現在は画像検査技術の進歩により,肝臓がんの早期発見は十分に可能です。
ハイリスクの要因を持つ人は,専門医のエコー検査,CT検査,MRI検査などの画像検査や,腫瘍マーカー,肝機能検査などを定期的に受けることが大切です。
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肝臓がんはきわめて再発率の高いがんであり,治療によりがん細胞が消滅したように見えても,その後再発する可能性が高いがんでもあります。
その原因として,肝臓がんが肝炎ウィルスの感染が原因となっている場合,そのウィルスを駆逐できない場合も多いということや,肝臓の多くの血管を通して,がん細胞が血流に乗り,肝臓内で転移しやすいということなどがあげられます。
また,肝硬変は基本的に元にもどるということはなく,肝硬変の状態がある限り,いつでもがん化する可能性はあります。
このようなことから,肝臓がんが治癒しても多くの患者が再発の不安をかかえて生活しています。
では,この肝臓がんの再発を予防するにはどうすればよいのでしょうか?
●ウィルスの除去
肝臓がんの原因がウィルスである場合,治療後ウィルスの除去に努めることが最も重要です。
ウィルスに対する治療法は近年,著しく進歩し,効果の高い新薬が開発されていますので,
以前治療しても効果がなかったとあきらめず,積極的に受診しましょう。
B型肝炎とC型肝炎では治療薬が異なります。
B型肝炎に対しては,インターフェロン,ラミブジン,アデホビル,エンテカビルが使用されます。
C型肝炎に対しては,インターフェロン,リバビリンという薬剤が使用されます。副作用はありますが,ウィルスが除去されたり,数が減少することで肝臓がんの再発をかなり低下させることができます。
●レチノイドの投与
ビタミンAに似た構造を持つ物質レチノイドは,肝臓がんの再発を防ぐ効果があるといわれながら,これまで,なかなか開発,臨床研究が進みませんでした。
しかし,製薬会社の興和は2011年,「肝細胞がんの再発抑制剤で,レチノイドの一種『ペレチノイン(一般名)』について厚生労働省に製造販売承認を申請した。」と発表しました。
レチノイドは肝細胞の核内で受容体と結び付き,正常な分化を促すとされ,この成分が不足するとがん化が進むことから,興和はレチノイドの代わりに受容体に結合するペレチノインの開発を進め,承認申請しました。
この薬剤の効果を検証するため外科手術などを受けた患者を対象にした国内治験では,1日600mgを投与した群では3年間の無増悪生存率は43.7%と,プラセボ群の29.3%に比べ再発を大幅に減らしたということです。
現在この新薬の治験に参加することができます。その施設などに関しては詳しくは主治医の先生に尋ねてみてください。
●免疫細胞療法
免疫細胞療法とは患者の体内にあるNK細胞,T細胞,樹状細胞などを体外に抽出し,活性化および増殖させて,体内にもどすことでがん細胞を攻撃させようという治療法であり,近年研究も進み,患者のがんの表面に発現している分子を調べることによって,そのがんに効果のある免疫細胞を培養するなど,適切な治療法を選択できるようにもなりました。
特に再発防止は免疫細胞療法の最も適しているところでもあり,肺がんや肝臓がんなど術後に免疫細胞療法を行うと,再発率や死亡率が低下するということは,多くの学会でデータとして報告されています。
しかし,保険が適用できず,効果をあげるには複数回の投与が必要ですが,1回の免疫治療でも約20万円ほどかかり,高額な費用は問題ともいえます。
●がんワクチン療法
現在,癌ワクチンは話題になり,注目されていますが,このがんワクチン療法とは,がん細胞の表面にでているがん抗原と同様のがんペプチドを皮下,あるいは皮内に注射することで,免疫細胞にがんを認識しやすくし,がん細胞を攻撃する力を高めるという免疫療法です。
このワクチン療法には手術して,取り出した患者のがん細胞を無毒化し,粉砕して投与するという方法(自家ワクチン療法)や人工的に合成したがん抗原(がんペプチド)を投与する方法とがありますが,いずれにせよ,人間の目が見逃してしまうような微小ながん細胞も免疫細胞が発見,駆逐してくれるので再発予防には向いた治療法といえます。
現在,熊本大学消化器内科で肝臓がんの再発予防のがんペプチドワクチン臨床試験を実施していますので,参加してみたい方は問いあわせてみてください。
熊本大学 消化器外科 TEL:096ー373ー5150
●定期的な検査と健全な食生活習慣を
治療後も約3ヶ月に1度を目安として,医療機関で検査を受けるようにしましょう。再発したとしても腫瘍が小さく,数が少ないなど早期なら治癒も可能です。
また,暴飲暴食,睡眠不足など肝臓に負担をかける生活習慣は改めましょう。
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