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肝臓移植(肝移植)には,脳死の人から肝臓を移植する「脳死肝臓移植(脳死肝移植)」と,生きている人から肝臓の一部をもらって移植する「生体肝臓移植(生体肝移植)」の2通りがあります。
肝臓は再生能力がたいへん高い臓器であり,体積の70パーセントを切除しても,残りの30パーセントで必要な機能を維持できるだけでなく,数ヶ月で切除した部分は再生されます。
しかし,発生した部位によって手術も不可能なケースもあり,肝臓がんの多くの患者が肝硬変をともない,肝機能が低下しています。
肝臓の機能のほとんどが失われ,手術も不可能な場合の最後の手段がこの肝臓移植といえるでしょう。
1997年に「臓器移植法」が制定され,1999年から脳死肝移植も始まりましたが,国内では,脳死ドナーの人数が少なく,海外で脳死肝移植を受ける人もいます。
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肝臓がんの生体肝移植では肝臓がんから他の部位に転移がなければ,腫瘍を完全に取り除くことができ,肝硬変でもとにもどらなくなった機能も移植によって取り戻すことができます。
しかし,肝臓がんであれば誰でも生体肝移植が受けられるわけではありません。生体肝移植が受けられる人は、ドナーを確保できることが大前提となります。
次に肝臓がんの状態が考慮されます。がんの大きさやがんの数,腫瘍マーカー等を参考にして移植で治る肝臓がんかどうかを判断します。
この判断基準はミラノ基準と呼ばれ,遠隔転移や血管侵襲がなく,肝臓がんの個数が1個以下なら5cm以下,3個までなら腫瘍の大きさが3cm以下であることが条件となります。
しかし,最近の肝臓移植の例では,ミラノ基準に合致していなくとも,肝臓移植により良好な成績をおさめているケースもあります。
また,アルコール性肝硬変を基礎に持った肝臓がんの場合には,移植前に約六か月の禁酒ができるかどうか,実際に行って禁酒が可能かどうかの確認が必要となります。
この点が十分確認されてはじめて移植の適応の検討となります。
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生体肝移植は多額の費用がかかりますが,医療保険が適用される場合と適用されない場合があります。
肝臓がん患者は,肝臓がんと肝硬変を合併し,かつミラノ基準に合致している場合は保険は適用されますが,それ以外は適用されません。
ただし,移植後にいったん退院した後の医療費は保険の適用となります。
移植に要する費用は,保険が適用されない場合,移植を受ける人(レシピエント)が約1000万〜1500万円で臓器提供者(ドナー)が200万〜250万円程度です。
この費用に関してはは個人差が大きく,手術後の経過によっては2000万円以上かかることもあります。
脳死肝移植は実施が認定されている施設の一部では,厚生労働省が認定する「高度先進医療」の対象になっています。
手術後の入院費,管理費(免疫抑制剤を含む)には保険が適用されますが,移植手術そのものは適用外で,さらに医師を臓器提供者のところまで派遣する費用や臓器摘出の費用等がかかります。
ある推定では,移植初年度の費用は800万円程度とされています。
脳死肝移植ではドナーを国内で見つけるのは難しく,国内の病院と連携して海外で脳死肝移植を見つける人もいます。
脳死肝移植をアメリカ,南米,オーストラリアなどの海外で受ける場合には,数千万円単位の費用がかかります。
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