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B型肝炎とは肝炎を起こすウィルスHBV(B型肝炎ウイルス)の感染により,肝臓が炎症を起こす病気です。
B型肝炎ウィルスに感染している人は世界では3億6千万人以上と見られ,国内の感染者は少なくとも140万人と推定されています。
B型肝炎ウィルスの感染には2種類あり,一つは一過性感染と呼ばれるもので,1〜6ヶ月の潜伏期間経て,急性肝炎を発症するものです。
この症状は全くでない人もいれば,発熱や黄疸などの肝炎特有の症状が出る人もいます。しかし,このような症状がでても,ほとんどの人は治癒し,慢性肝炎に移行することはありません。
しかし,近年の研究によると,症状はおさまってもHBVは完全には駆逐されないで,体内に残り,健康上問題はなく,感染もしないものの,軽い炎症は続く場合もあることがわりました。
もう一つの感染は持続感染と呼ばれるもので,体の免疫機能が整わないうちに感染するため,ウィルスを駆逐できず,ウィルスキャリアとなってしまうケースです。
このHBVが6ヵ月以上にわたって肝臓の中にすみつくことで,一部の人は慢性肝炎を発症します。慢性肝炎とは,通常6ヵ月以上肝炎が続いている状態を指します
このHBV感染者の一部の人が肝硬変さらには肝臓がんを発症します。また,C型肝炎と異なり,B型慢性肝炎は肝硬変を経ずに肝臓がんを発症することがあります。
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B型肝炎ウィルス(HBV)は,B型肝炎ウィルスを引き起こすウィルスで,1963年にオーストラリア原住民のアボリジニの血清から,未知の抗原として分離され,その後B型肝炎発症の原因となるウィルスであることが判明しました。
HBVの約8%は変異が大きく,変異の形態により,タイプA〜Gの8種類に分けられます。
これまで,日本でのB型肝炎のほとんどがタイプCでしたが,性行為による感染と考えられるタイプAやタイプD,タイプEなども見られるようになっています。
B型肝炎の感染は輸血,母子感染,医療従事者の針事故,性行為などによって起こります。
現在,輸血用の血液は厳重にチェックされるようになり,輸血による感染はほとんどなくなっています。
母子感染はHBVキャリアすべての母親から子どもに感染するわけではなく,同じキャリアでも感染力の強いウィルスを保有している母親からの感染率が高くなっています。
現在では,そのような子どもには公費によって,免疫グロブリンとワクチンの接種が可能となり,かなり防げるようになりました。
また,性行為ではキス程度では感染しませんが,体液から感染するので,予防には避妊具などの装着が必要です。
パートナーがHBVキャリアとわかった場合は,ワクチン接種で感染を防ぐこともできます。
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B型肝炎には,急性と慢性の2種類があります。
● B型急性肝炎
B型急性肝炎の多くは性行為による感染といわれています。
B型急性肝炎は発病までの潜伏期間が,他のウィルスに比較してかなり長いという特徴があり,発症まで6ヶ月〜1年かかります。
通常はこの潜伏期間の後に,発熱,食欲不振や倦怠感に続き,黄疸などの強い肝炎症状が現れます。この状態が2ヵ月ほど続きます。
しかし,既に述べたように,免疫系が完成している成人が感染すると,このウイルスに対する抗体が体内につくられるため,それによってウイルスは駆逐され,肝炎は自然治癒します。
このB型急性肝炎のさらに1%の人は劇症肝炎を発症します。この劇症肝炎は生命にも関わるほどで,通常の急性型と同様の食欲不振や悪心,嘔吐,全身倦怠感などの症状だけでなく,意識障害も現れます。
● B型慢性肝炎
肝臓の機能の異常が,急性肝炎では2ヵ月前後でほとんど消滅するのに対し,6ヵ月以上続く場合を慢性肝炎といいます。
この慢性肝炎は肝硬変,そして肝臓がんへと進展する場合があり,B型慢性肝炎は,肝硬変および肝臓がんの前駆病変とされています。
B型慢性肝炎は基本的に、新生児期または乳幼児期に母親から感染してウイルスキャリアとなった人が発症するもので,成人が感染してB型慢性肝炎になることはほとんどありません。
このため, 日本では妊婦は必ずB型肝炎ウイルスに感染しているかどうかの検診を受けることになっています。
このキャリアが成長して20〜30歳代になると,ウイルスに感染した肝細胞を異物と認識するようになり,免疫細胞が肝臓を攻撃するようになり,肝炎を発症するのです。
しかし,母子感染者の約90%の人はウイルスが減少し,自然治癒します。そして残りの約10%の人が,慢性肝炎へと進行します。
慢性肝炎の場合,軽度ならほとんど自覚症状はありませんが,炎症が進行して肝硬変を起こしはじめると,倦怠感や食欲不振などの症状がしだいに顕著になってきます。
B型慢性肝炎を発症した人々の中で約30%は肝硬変に移行します。さらに肝臓がんを発症し,死に至る場合もあります。
B型肝炎はC型と異なり,肝炎が発症した段階で,いきなり肝臓がんヘと飛躍する確率が高いことが知られます。
B型慢性肝炎を発症した人が肝臓がんヘと移行する確率は,それ以外の原因で肝臓がんになる人の200倍にも達するといわれています。
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● B型急性肝炎
B型急性肝炎を発症した場合,肝炎そのものを治療する方法はなく,症状を緩和するための対症療法を行いない,自然治癒を待つことになります。
多くの場合,2ヵ月前後で感染者の体内に抗体がつくられてウイルスが駆逐され,自然治癒します。
対症療法では安静にして,栄養管理を中心に行います。食欲不振が強い場合は,点滴で栄養や水分の補給を行います。
● B型劇症肝炎
他の肝炎が劇症化したときと同様に,対症療法以外には有効な治療法がありません。 しかも症状が重いため,生存率は,生体肝移植を行う場合を含めても50%前後にとどまります。
劇症肝炎は感染症や脳浮腫,腎臓障害,消化管出血など重い合併症をともなうことも多く,全身の状態を見ながら合併症の治療を行います。
そのほか,血漿中の肝性脳症や黄疸の原因物質を取り除く血漿交換療法,抗ウイルス薬や免疫抑制剤などを使った治療が行われることもあります。
また,肝臓移植の対象ともなります。
● B型慢性肝炎
B型慢性肝炎では大きく3つの治療法があります。それらは「肝臓の炎症を抑える。」「ウィルスを抑制する。」 「免疫力を高める。」 の3つです。
◆肝臓の炎症を抑える
グリチルリチン配合剤の投与
グリチルリチンは漢方の生薬である甘草の根から抽出した成分で,このグリチルリチンを主成分とした薬が,グリチルリチン製剤です。
グリチルリチン製剤は,肝細胞の細胞膜を強くし,肝細胞が破壊されないように,保護する働きがあります。
ウルソデスオキシコール酸(ウルソ)の投与
肝臓の血流をよくして,肝臓の細胞を守ります。特に胆石や胆汁うっ滞をともなう肝臓病に向き,慢性肝炎においても肝機能値の改善効果が認められています。
経口投与する薬で強力な作用があるとはいえませんが,安全性が高く,副作用も比較的少ない薬です。
◆抗ウイルス薬の投与
インターフェロンの投与
インターフェロンは,免疫細胞が分泌するサイトカインで,ウイルスの増殖を抑えるはたらきがあります。
B型肝炎の場合,C型肝炎に比べて体内のウイルス量が非常に多いことから,インターフェロンを使っても,C型肝炎ほどの効果は望めませんが,ウイルス量が少ない人に対しては有効です。
インターフェロンはかつて肝臓がん治療薬として期待されたことがありましたが,単独ではあまり効果のないことが明らかとなり,現在では,慢性肝炎に使用されます。
ラミブジンの投与
2000年に,イギリスの製薬会社グラクソースミスクライン社が発表したラミブジン(ゼフィックス)は抗ウイルスの内服錠剤で、エイズ治療用に開発されたものですが,B型肝炎にも効果があることから,2000年に日本でも保険適用となりました。
成人では,投与開始から4年後には全患者の75%でウイルスが消滅したと報告されており,強力な新薬として期待されています。
また母子感染が起こった幼児でも投与1年後には23%の子どもでウイルスが検出されなくなったと報告されています。
◆免疫力の向上
ステロイドリバウンド療法
ステロイド薬には,免疫の働きを抑える作用があります。これを1ヶ月間集中的に使用してある程度免疫力を抑えた後に使用を中止します。
すると,今まで抑えられていた反動で,免疫力が急激に高まり,肝炎ウイルスを攻撃します。 その結果,ウイルスが大幅に減少します。
ただし,免疫力が強くなりすぎると,逆に肝炎の重症化を招き,危険な状態に陥ることがあるので,肝臓に残っている能力や肝炎の状態などの適応条件を十分に検討して行うことが必要です。
そのため,患者がかつて黄疸になったり,肝硬変が生じている場合などには適用されません。
小柴胡湯の(しょうさいことう)の投与
小柴胡湯はは7種類の生薬を組み合わせた漢方薬で免疫機能を調整し,炎症をやわらげる効能があります。
また,インターフェロン療法と小柴胡湯の併用は間質性肺炎が起きる危険性があるため,禁止されています。
現在,肝炎や肝硬変など様々な疾患に使用され,保険適用にもなります。
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